日本人は、もっと母国語を大切にすべきである - 望月勇

日本人は、もっと母国語を大切にすべきである (1)

 

 日本人は、母国語で科学ができて、母国語で考えることが出来ます。これはあたりまえでしょうか? 実は、これができるのは世界でも稀な国なのです。
 世界の多くの国は英語圏に支配されて、母国語ではなく、英語で科学し、そして英語で考えることしかできなくなっています。
 第二次世界大戦後に、占領軍日本分割案がありました。もし日本が、連合国軍によって日本の分割統治計画が実行されていたら、日本は一体どうなっていたでしょうか。

 

 実はサンフランシスコ講和条約の前に、占領軍日本分割案というのがありました。極秘文書でしたが今はアメリカの国会図書館で見ることができます。それによると、九州はイギリスが、四国は中国が、本州はアメリカが、そして北海道はソ連が分割して統治するというものでした。こういう話を若い人に話すと、「私、九州出身だから、ブリティッシュパスポートがもらえるかも」 と言いました。

 

 もしこの分割案が実行されていたら、日本語は確実に衰退して、日本文化はなくなって行ったかもしれません。言葉は、文化です。もしソ連が北海道を支配し、日本語を使うのを禁止され、ロシア語だけになったら、北海道から日本文化はなくなって行ったことでしょう。樺太のように。

 

 終戦後、吉田茂が首相になりました。彼は、「戦争に負けて、外交に勝った歴史がある」 と考え、戦略を練り、アメリカに働きかけて、日本列島は幸いにも分割されないですみました。

 

 また戦後、日本占領軍にマッカーサー元帥が来たこともラッキーでした。このMacArthurのマック(Mac)という苗字は、ケルト人の末裔です。他に例をあげれば、マッカートニー(MacArthney)、マックイーン(McQueen)、マクドナルド(MacDonald)、マクベス(MacBeth)など多くのマックがつく苗字があります。

 

 昔、ローマがヨーロッパを支配する前は、ヨーロッパにはケルト民族が居住していました。ケルト民族は、インドヨーロッパ語族なので、大きな岩や木には精霊が宿ると考えていました。ケルト人は、日本人と考え方が似通ったところがあります。アイルランド出身のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が、日本の妖精物語を理解できたのも、彼の中にあるケルト人の血が共鳴したからかもしれません。

 

 ローマがヨーロッパの各国を席巻して、その後にキリスト教の宣教師が来て、ケルトの遺跡の跡に教会が作られていきます。ヨーロッパ人は、ローマ人の末裔ではなくて、ケルト人の末裔です。もともと住んでいたケルト人がキリスト教に改宗しただけで、他の民族がヨーロッパへ移って来たわけではないのです。

 

 ですから、エンヤというケルトの歌を歌う歌手がいますが、彼女の歌を聞くと、ヨーロッパ人は、胸にジーンと来るのです。キリスト教以前のケルトの血が共鳴するからでしょうか。日本人も、ジーンときます。ケルトの遺跡に、日本の古い神社にあるのと同じシンボルがあったりして、日本人の感性とどこかでつながっているので、エンヤの歌に共鳴するのかもしれません。

 

 そのように考えて行くと、ケルト人の末裔の名前を持つマッカーサーが来たことは、日本をよく理解できる最も適した人だったことになります。もし日本をよく理解することができない元帥がきたら、天皇を戦争犯罪人にして裁き、きっと皇室も今の状態で残っていなかったかもしれません。
 そのように考えると、戦後日本語と日本文化は、未曾有の危機に遭いながらも、不思議な幸運に恵まれて、存続してきたことが分かります。

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