2016年インド旅行記(1) ブッダガヤのスーパームーン

ブッダガヤのスーパームーン (1)

 

 2016年11月13日に、私はインドのブッダガヤにいました。ヨーガ教室の皆さまと一緒に、インドを旅していたのです。
 13日はインドの月が、丸く、赤みを帯びて異様に大きく見えたので、特に印象に残っていました。インドでは、11月は乾季で、毎日晴天が続き、川床には水がほとんどありません。地平線から登る月は、赤みがかっていますが、中天に登っていくと白く輝きますので、何回もインドを訪れている私には、別に驚くことはなかったのです。

 

 その私が、満月を見て(まだ心持ち完璧ではないようでしたが)、インドの満月はこんなに大きかったかな、と不思議に思っていました。
 すると13日の夜に、日本のヨーガの生徒さんからメールが届きました。そのメールには、「11月14日の満月は、スーパームーンで、68年ぶりに地球にもっとも接近するそうです、インドの満月はどうですか」と。それで私は、異様に輝く大きな満月を理解できました。

 

 今回のインド旅行には、この68年ぶりのスーパームーンのことは、まったく考えていませんでした。実は、去年インド旅行をする予定でしたが、ネパールの大地震があり、今年に変更したのです。また、いつもなら、インドへは11月初旬に日本から行くのですが、今回だけは直接ロンドンからインドへ入国することにしたのです。このように色々な偶然が重なり、ブッダガヤで68年ぶりのスーパームーンを迎えることはができたことは、何か見えない糸で導かれている気がしてなりません。

 

 そこで、私は考えました。68年ぶりというと、私が今68歳ですから、私が生まれた年は、スーパームーンだったということになります。苗字も望月(満月)ですから、ちょっと因縁めいた感じがして、何か起きるのではないかという、漠然とした不安と期待を感じました。

 

 というのは、何年か前に、帯広でスーパームーンを見たことがありました。記憶では10月初旬の日曜日だったように思います。ヨーガのクラスが終わり、夕方帯広の空港へ向かう途中、地平線に大きな満月が出ていて、空港のテレビではスーパームーンのことを、しきりに報じていました。私は、漠然と何か起きるかもしれないという予感がしました。それは、的中しました。帯広から出発する便は夜8時ごろでしたが、晴れていた空港がすっぽりと濃い霧に包まれ、東京から到着するフライトが着陸できなくて、霧の晴れるのを待つことになり、空港の上空を旋回していました。とうとう濃霧は晴れなくて、45分後に飛行機は羽田へ引き返したのです。そのため私の乗るフライトはキャンセルになりました。空港の職員は、この時期に霧がでることはめったにありません、と言っていたので何かスーパームーンの影響があったのかもしれません。

 

 ブッダガヤでは、私たちは午前中、前正覚山へ出かけました。まだブッダが覚りを開く前の山という意味で、前正覚山と呼ばれている山です。その中腹にブッダが洞窟で6年間苦行をしたという洞窟があり、そこを訪れました。洞窟は意外に小さくて、中に入ると空気が濃密で、母親のお腹の胎児になったような心地がしました。敏感な人は、洞窟の壁に手を触れたとたん、びりっと電気に打たれた衝撃を感じたと言います。中国、唐代の僧、玄奘三蔵はこの洞窟を訪れていて、旅行記に、洞窟の壁にブッダの遺影が残っていた、と記してあるそうですが、私には影は確認できませんでした。

 

 その前庭での瞑想も、本当に心地よかったです。そこから下の緑豊かな平野が見渡せます。そしてその風景を眺めていると、ここは、ちょうどブッダが仲間と修行する場所には、最適であることが分かりました。早朝に下界の部落へ歩いて托鉢をし、そうして食べ物を調達して帰ってこられる距離で、人々に修行を邪魔されない場所にあるのです。

 

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