石垣島のリラックス

石垣島のリラックス 4


ハイパーソニック・サウンド

 このジャンルの中で、ただ座っているだけで、至福になれるのはどうしてでしょうか?
 これには科学的根拠があります。このような手つかずのジャングルの中には、人間の耳には聞こえない音が満ち満ちているのです。最近では、植物同志が、信号を送って、遠くの仲間と会話をしているということも分っています。動物や昆虫や植物が出す人間の耳には聞こえない森の環境音などを、「ハイパーソニック・サウンド」 といいます。複雑に変化する超高周波を含む音です。その音は、耳では感じることはできませんが、皮膚や内臓で感じることができる高周波の音です。

 その高周波の音には、ハイパーソニック・エフェクトという効果があります。心をリラックスさせ、心身を癒す力があることが証明されているのです。
 その高周波には、人間の脳の最深部を活性化したり、音楽を聴くと劇的に心に響いたり、癌やウイルスから身を護る力があります。また健康が増進し、生きていく上で望ましい行動ができ、至福の境地が訪れるという効果もあるのです。

 このハイパーソニック・エフェクトを強く発現させる例には、次のようなものがあります。バリ島のガムラン音楽、琵琶、尺八、雅楽、熱帯雨林の環境音などです。
 民俗音楽の研究者は、バリ島のガムランの演者がトランス(恍惚)状態になることに注目し、その原因を調べたところ、耳には聞こえない音波の影響を発見しました。CDに録音された演奏ではトランスにはならないのです。CDの音の周波数では2万ヘルツまでしか録音できないのが、ガムランのライブ音源では10万ヘルツ以上の音がでていたのです。その音は、耳からではなく、首から下の皮膚で聴いていたことも分かりました。

 このハイパーソニック・サウンドは、都会にはまったくありません。むしろ都会の雑音が、心身に悪い影響を与えているのです。また人間が手を入れた森林でもでていません。本州であるとしたら、伊勢神宮や出雲大社や熊野の神聖な森か、白神山地の手つかずの森くらいしかありません。
 そう考えると、石垣島合宿に参加した人たちが、みんな素晴らしい笑顔で楽しんでいたのは、日常生活から離れて、ヨーガをやり、さらにハイパーソニック・サウンドの影響があったからなのだと理解できました。

 ハイパーソニック・サウンドの影響は、古代日本人にも影響を与えていたと思われます。日本でおよそ1万5千年前から始まった縄文時代は、高温期にあり、日本全土が森林でおおわれていました。この暗い森の中で形成された精神世界は、山や川や石や木の精霊を生み出し、アニミズムが生まれ、穏やかな心が育まれたに違いありません。日本のアニミズムは、樹木を崇拝してきました。縄文時代の木の精霊は、生命のシンボルでした。それは、神道にも受け継がれています。

 縄文時代は、1万年ほども続きました。平等で平和な時代が、これほど長く続いたことは、世界史にも例がありません。その原因には諸説ありますが、私は、ハイパーソニック・サウンドの影響もあるかもしれないと思っています。
 例えば、日本人の道徳心を考えた外国人がいました。大正10年にフランスの駐日大使として日本にやってきたポール・クローデルです。彼は、フランスの詩人・劇作家でもありますが、彼の著書 『朝日の中の黒い鳥』 を読むと、この国に生える大木の感覚が、日本人に悪へ走ることを止めさせたのではないかというのです。
 つまり、クローデルは、日本人の道徳心は、大木の霊から学んだもので、悪へ走ることをいましめられていると直感していました。それは表現を変えれば、大自然の森に生まれるハイパーソニック・サウンドは、日本人が残虐へ向かう行動を抑制していたことになります。

 日本人が、残虐性を抑制していたことは、縄文人と弥生人が共存していたことにも現れています。縄文人が滅んで、弥生時代が始まったわけではないのです。それが証拠に、現代日本人のDNAには、縄文人の遺伝子が受け継がれているからです。

 一方、世界の歴史を見ると、残虐性が違うのです。例えば、英国には5千年前にストーンヘンジなど高度な文明を造った古代ブリトン人が住んでいました。ところが4千年前に大陸からやってきたビーカー人に、遺跡もろとも見事に破壊尽くされました。そのビーカー人も、鉄器をあやつるケルト人によって絶滅させられます。
 現代科学で、古代人の骨のDNAを調べると、ビーカー人の中に古代ブリトン人のDNAは全くありません。現代英国人のDNAには、古代ブリトン人とビーカー人の遺伝子はまったく入っていないので、両人種とも虐殺されて絶滅したと思われます。

 またハイパーソニック・サウンドの影響は、現代でも見られます。岡本太郎も惹きつけられた島民の人たちの、穏やかで素朴な人間性です。それと、石垣島や竹富島や西表島に移住している人たちです。島の観光ガイドさんや、気品のある陶器を造る陶芸家や、島の浜に中国から流れ着く大量のペットボトルなどのゴミを、休みの日を利用して黙々と掃除しているボランティアの方々です。皆さんは、大変に意識の高い、素晴らしい人々なのです。これら意識の高い移住者は、島に満ちているハイパーソニック・サウンドに惹きつけられたに違いありません。