コロナ禍で、自分と向き会う日々

コロナ禍で、自分と向き会う日々 5

脳梗塞になって

 そして入院してから、MRI検査を受け、脳梗塞と診断されました。二日目の夕方、唇がしびれるような、冷たいような感覚があり、舌で唇をなめると、それは他人のようでした。そして、左手を動かそうとしました。まったく動かないのです。それは自分と無関係になってしまったようでした。右手で触っても、左手のひらには感覚がありません。今度は、左足を動かそうとしましたが、微動だに動きません。

 私は、左半身不随になってしまったのかと嘆く前に、自分の脳を思い描いて、瞑想を始めました。気は、思ったところに集まることを知っていたからです。
 どれくらい時間が経ったのか分かりません。私は、静かに眼を開けて、左手のひらを見つめ、恐る恐る、ゆっくりと、指を動かしてみました。
 動いたのです。「ありがとう」 思わず言葉がでました。この時ほど、当たり前の、なにげない日常の動作が、これほど尊いということを、私は身を持って知りました。私は、生かされているのだ、宇宙の叡智に生かされているのだ、と思わずにいられませんでした。

 47年間、病院に行ったことがなかったので、すべてが新鮮な体験でした。病室には8つベッドがあり、隣の人と向かいの人が肺が苦しいのか、薄いレースのカーテンを通して、せき込みながらうめく声が一晩中聞こえてきました。早く退院したいと思いました。
 そして、退院してからは、生活スタイルを変えました。毎朝5時に起きて7時までヨーガを続けました。遠隔治療は、朝7時と、夜10時にすることにしました。そして、夜10時半過ぎには寝ることにしました。 その生活スタイルを変えた効果なのか、血圧は110前後で安定し、体調もすっかりよくなり、2回目のMRI検査で、脳の血管の腫れは退いて、普通に戻っているのを画像で確認できました。

 今回の脳梗塞で分かったことが、二つありました。一つは、肉体は年を取って衰えていきますが、気は年をとっても衰えないということです。衰えないばかりか、さらに向上して行くということです。私の武道の師匠故早川宗甫先生は、気が本当に分かったのは、脳梗塞になり、病室のベッドで動かない手首をお弟子さんに掴んでもらい、投げ飛ばすことができたときだと話していました。昔の武術家が開眼した時は、だいたい自分の無力さを知って、宇宙の無限の力に目覚めたときだと思います。
 私も、脳梗塞の後気功治療したとき、施術された人々が、全身に今まで感じたことがない凄い気を感じましたという言葉を聞いて、やっぱりそうなのだ、肉体は衰えていくけれども、気はますます向上していくものだということを実感できました。

 もう一つは、私の生活スタイルに変革を起こす為に、何かの力が働いたかもしれないということです。その何かの力こそ、脳梗塞だったのです。考えてみれば、土日の休みもなく、休憩時間もなく気功治療をし、睡眠時間が極端に少ない生活をこのまま続けていけば、いつか破綻することになりかねません。それを考えると、脳梗塞は体が出したシグナルなのです。
 それが、コロナウイルスのパンデミックに呼応して、生活スタイルをうまい具合に変えることができたのです。私は、この自分の体験を通して、コロナウイルスのパンデミックは、人類にとって大変な試練ですが、大きな観点から見たら悪いものではない、人間のエゴにより壊れかかった地球を、よい方へ変えようとしている何かの力が働いているとポジティブに思えるようになりました。

<<前ページ 1 2 3 4 5 6 7 8 次ページ>>