量子論を身近に感じる

量子論を身近に感じる 4


パラレルワールド

 量子力学の研究者たちは、先に述べたニュートン力学では想像もつかなかった不可解な現象を起こすのは、人間の意識であると言っています。
 何かを期待して意識するという行為は、その他の可能性を排除してしまい、それ以外にはならないというのです。私たちが、期待を少しゆるめると意識した以外のものになる可能性があり、意識しなければ可能性は無限に広がるというのです。
 ある学者は、意識によって、情報を持つ量子に、時間を先に進める先行波と、後ろに進める逆行波があり、空間を上下左右に移動し、時間を過去にも未来にも移動することができるといいます。
 またある学者は、量子は、空間的には宇宙全体へ、時間的には何億年もの過去や未来に広がり、宇宙規模で、見える世界と見えない世界を考えると、宇宙は一種の二重システムになっており、人間が意識して量子を観察するたびに、その意識にしたがう宇宙が分岐して、パラレルワールド(平行世界・並行世界)ができあがる、とまで推論しています。
 私たちは、明晰夢や瞑想でパラレルワールドを見ることがありますが、物理学者はパラレルワールドは現実に存在していると言っているのです。

 この宇宙は、140億年前に極微の一点から生まれて、ビッグバンという大爆発がおきて、膨張を続けて現在に至っていると考えられています。
 このような宇宙の歴史に量子論を適用すると、宇宙の始まりの何もない真空の状態から、光子などの微粒子が生まれるかどうかは、量子論では確率の問題になるというのです。何もない真空から、なぜ粒子が生まれるのかという疑問は、真空では粒子と反粒子が絶えず生成・消滅していて、哲学的な 「無・ゼロ」 は、物理的にはあり得ないという真実を量子論が証明したからです。

 ビッグバンで生じた莫大な物質と反物質が、衝突して物質が消える 「対消滅」 が起きたということですが、これは日本の科学者が雷の多い日本の雷雲の中で、物質が忽然と消え去る 「対消滅」 を発見しました。映像に映し出されたこの驚異の物理現象は、2017年物理学10大ニュースとして、世界に衝撃を与えました。

 量子論の確率でいくと宇宙は、「微粒子が生まれた世界」 と 「微粒子が生れなかった世界」 に枝分かれすると考えられます。これをさらに考察していくと、「私たちが現在いる宇宙」 と同時に、「別の私がいる宇宙」 や 「私がいない宇宙」 といった宇宙(並列の宇宙・パラレルワールド)が考えられることになったのです。

 このような他世界解釈においては、観測することは不可能であり、その存在を肯定することも否定することもできないといいますが、私は存在すると実感しています。

 19年前に母が亡くなって、私は深い悲しみに押し潰されそうでした。もう二度と母に会うことができないのだと落ち込んでいました。
 「実際、母を亡くしてしばらくは悲しかったのですが、あるとき瞑想をして母のことを思うと、閉じたまぶたの裏に、母がリアルな映像となって表れてきました。私が問いかけると、母は答えてくれました。
 この不思議な体験をしてから、私の心は変わりました。母の嘆き悲しむ気持ちが、まったく消えてしまったのです。」 (『気の言葉』「深い悲しみを乗り越える瞑想」講談社より)

 私は、量子論を知ったことで、これが今母のいるパラレルワールドだったのではないかと思い当たりました。このような多次元世界は、遠くの彼方にあるのではなくて、今ここに、平行してあるようです。母のリアルな笑顔は、今ここに、現在と過去が重なりあって存在しているのです。私の心から嘆き悲しむ気持ちが消えたのは、この存在感の実感があったからだと思います。

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