なぜ量子論は、東洋思想に近づくのか

なぜ量子論は、東洋思想に近づくのか 6


物理学の理論

 ここで物理学の理論を考えてみます。物理学は、すべて 「唯物論」 に基づいています。素粒子も含めて、すべての存在は物であるという考え方です。
 ところが、唯物的な物理学の出発点は、人間原理です。認識しているのは私たちの人間の心ですから、「心」 を避けて通れないはずです。しかし、これまでの物理学は、唯物論的な尺度だけでこの世界・宇宙を記述してきたのです。
 一方、すべての存在が 「心」 の現れであると捉える考え方があります。唯心論です。実際に手で触ったり、目の前に見えるものが、すべてが心の現れであるといわれても、どういう意味か理解できない人が多いと思います。
 たとえば、赤い色を見ても、それが本当に皆に赤く見えているかどうかは分からないというのです。色は見る人にとって同じように認識しているかどうかは分からないというのです。
 これは 「クオリア(主観的感覚)問題」 と言われています。物質(イオンの流れや電流)が、目に見えない感覚を生み出すのはなぜか? つまり、いかにして、物質が感覚(意識・精神)を生み出すのか? という考えです。唯物論では、認識や感覚は、神経回路の電気的活性パターンに還元できると考えますが、この主観的感覚は、機械的なメカニズムでは説明ができません。このクオリア問題は、従来の脳科学や物理学ではどうやっても解明できないのです。

<<前ページ 1 2 3 4 5 6 7 8 次ページ>>