2018年9月中旬 トルコの旅 (5)
自然(ピュシス)と言葉(ロゴス)
もともとギリシアには、ロゴスとレンマがありましたが、ロゴスが優勢となり、レンマはほとんど使われなくなっていきます。
今から二千数百年前、ギリシアに、ヘラクレイトスという人物が現れ、「万物は流転する」 といいました。彼は、「相反するものの中に美しい調和がある」 と説きました。そして、この世界の真の存在は、自然(ピュシス)であると主張したのです。
それに対して、この世は、ロゴス(言葉、理性、理論)でできていると主張する人たち
がいました。ソクラテスやプラトンやピタゴラスなどです。もともと自然(ピュシス)の中には、ロゴス(言葉、理論)もあったのですが、ヘラクレイトスの 「相反するものの中に美しい調和がある」 という矛盾する言葉は、なかなか理解されませんでした。むしろ人間のロゴスという性格は、矛盾なく整合性を持った思考であるために、矛盾のない数学的な理念世界の人々、ソクラテスやプラトンやピタゴラスのような哲学者によって主流になって行きました。そして、その流れの中から、中世にデカルトが、近世にドイツの哲学者、カントがでてくることになるのです。
こうして見て行くと、西洋は 「ロゴスの論理」、 東洋は 「レンマの論理」 だということが分かってきました。
日本人の特長とは何か
西洋と日本は違うということは分かりましたが、それでは、アジアと日本はどうでしょうか?
例えば、インドやネパールなどでビザを申請します。インドやネパールに限らず、アジアの国々ではどこでもReligion(宗教)は何かと記入する箇所があります。空白にし
たり、No Religionと記入すると受け付けてくれません。日本人は、アジア人の中では、自分は無宗教だと思っている人が多いのですが、実は日本人は多神教なのです。
それが証拠には、仏壇の中心に仏様がいて、その前に位牌(儒教)があり、神社のお札(神道)を貼ったり、加持祈祷(道教)をしたりします。神仏習合といって、お寺の中に神社があったり、神社の中にお寺があったり、クリスチャンでなくても、教会で結婚式をあげたりします。
この日本人の不思議な節操のなさを理解するには、日本人の成り立ちを理解する必要がありそうです。
日本列島は、縄文の大昔から、常に台風や地震や津波や火山などの災害に見舞われてきました。日本人は災害にあっても、最近の原発事故を除き、どんな災害に見舞われてもすぐにまた復興してきました。日本人は、仏教から無常を学ぶ遥か昔から、天然の無常を享受してきたのです。
また最近、鳥取県にある青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡を調べて、縄文人や弥生人のことが分かってきました。20年前に道路工事で偶然発見されたこの遺跡から、弥生人の骨が100体以上見つかり、日本最古の人の脳も見つかったのです。DNAは細胞内の核とミトコンドリアの中に存在しています。ミトコンドリアDNAは、母系のルーツを辿ることができます。その分析結果は、以外なことに縄文系は1体だけで、他は全部大陸にルーツがあるものでした。そして、渡来人たちのルーツは、シベリアや中央アジア、中国、朝鮮半島、東南アジアなど実に広範囲で多彩だったことが分かりました。
また、福岡県の安徳台遺跡では、渡来系の弥生人の女性の骨が見つかり、核DNAを調べたら、縄文系の遺伝子も併せ持っていたことが分かりました。研究者は、この結果を知るまでは、渡来系が日本列島へやって来て縄文人と混血して弥生人になったと思っていました。しかし、実際は中国、朝鮮半島、東南アジアなどで、広範囲に縄文人とすでに混血していたことになります。
以上のことを類推すると、日本人の祖先は、縄文や弥生時代にすでに様々な人種や文化を受け入れて来た経緯があったのだと思われます。そう考えれば、私たちは神道でも仏教でも儒教でもキリスト教でも、なんでも受け入れて享受できるのは、祖先たちの経緯を見れば当たり前のことかもしれません。
日本人と森
そして、日本人の祖先は、豊な自然を崇拝して生活してきました。日本全国にある鎮守の森がそれを代弁しています。日本人は、巨木を見るとそれに精霊が宿っているというふうに感じました。アニミズムの感性を持っているのです。ヨーロッパでも、古代のケルト人の感性がそうでした。
例えば、イチョウの樹があります。イチョウは、二億五000年前に栄えた樹木です。恐竜は絶滅しましたが、イチョウは中国の南部にかろうじて生息し、生き延びていました。そして、千年前に日本へ持ち込まれたそうです。イチョウは、立派な巨木になるので、日本人のみんなに敬われ、神社やお寺や学校の校庭などに植えられて増えていったのです。
そして、イチョウは、17世紀にオランダの東インド会社のドイツ人の医師により、ヨーロッパへもたらされることになります。今では、英国やヨーロッパ大陸やアメリカなど、全世界に広がっています。日本人の自然崇拝が、絶滅寸前のイチョウを奇跡的に救ったのです。
以上のことからも分かるように、日本人の自然崇拝は、日本にある古来からの神聖な森―熊野の森や、伊勢神宮の森や、出雲大社の森などを大切に保護してきました。これら手つかずの森には、不思議な静寂さがあります。それは、聴覚では聴き取れない高周波の音で、現代科学で、ハイパーソニックサウンドと呼ばれています。その効果(ハイパーソニック・エフェクト)は、アルファ波を上昇させてリラックスさせ、ナチュラルキラー細胞の活性化とアドレナリンを減少させることが分かっています。このハイパーソニックサウンドは、都会では絶対ない高周波の音で、世界の中では日本の古来からある神性な森と、熱帯雨林にしか存在しないそうです。
もともとギリシアには、ロゴスとレンマがありましたが、ロゴスが優勢となり、レンマはほとんど使われなくなっていきます。
今から二千数百年前、ギリシアに、ヘラクレイトスという人物が現れ、「万物は流転する」 といいました。彼は、「相反するものの中に美しい調和がある」 と説きました。そして、この世界の真の存在は、自然(ピュシス)であると主張したのです。
それに対して、この世は、ロゴス(言葉、理性、理論)でできていると主張する人たち
がいました。ソクラテスやプラトンやピタゴラスなどです。もともと自然(ピュシス)の中には、ロゴス(言葉、理論)もあったのですが、ヘラクレイトスの 「相反するものの中に美しい調和がある」 という矛盾する言葉は、なかなか理解されませんでした。むしろ人間のロゴスという性格は、矛盾なく整合性を持った思考であるために、矛盾のない数学的な理念世界の人々、ソクラテスやプラトンやピタゴラスのような哲学者によって主流になって行きました。そして、その流れの中から、中世にデカルトが、近世にドイツの哲学者、カントがでてくることになるのです。
こうして見て行くと、西洋は 「ロゴスの論理」、 東洋は 「レンマの論理」 だということが分かってきました。
日本人の特長とは何か
西洋と日本は違うということは分かりましたが、それでは、アジアと日本はどうでしょうか?
例えば、インドやネパールなどでビザを申請します。インドやネパールに限らず、アジアの国々ではどこでもReligion(宗教)は何かと記入する箇所があります。空白にし
たり、No Religionと記入すると受け付けてくれません。日本人は、アジア人の中では、自分は無宗教だと思っている人が多いのですが、実は日本人は多神教なのです。
それが証拠には、仏壇の中心に仏様がいて、その前に位牌(儒教)があり、神社のお札(神道)を貼ったり、加持祈祷(道教)をしたりします。神仏習合といって、お寺の中に神社があったり、神社の中にお寺があったり、クリスチャンでなくても、教会で結婚式をあげたりします。
この日本人の不思議な節操のなさを理解するには、日本人の成り立ちを理解する必要がありそうです。
日本列島は、縄文の大昔から、常に台風や地震や津波や火山などの災害に見舞われてきました。日本人は災害にあっても、最近の原発事故を除き、どんな災害に見舞われてもすぐにまた復興してきました。日本人は、仏教から無常を学ぶ遥か昔から、天然の無常を享受してきたのです。
また最近、鳥取県にある青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡を調べて、縄文人や弥生人のことが分かってきました。20年前に道路工事で偶然発見されたこの遺跡から、弥生人の骨が100体以上見つかり、日本最古の人の脳も見つかったのです。DNAは細胞内の核とミトコンドリアの中に存在しています。ミトコンドリアDNAは、母系のルーツを辿ることができます。その分析結果は、以外なことに縄文系は1体だけで、他は全部大陸にルーツがあるものでした。そして、渡来人たちのルーツは、シベリアや中央アジア、中国、朝鮮半島、東南アジアなど実に広範囲で多彩だったことが分かりました。
また、福岡県の安徳台遺跡では、渡来系の弥生人の女性の骨が見つかり、核DNAを調べたら、縄文系の遺伝子も併せ持っていたことが分かりました。研究者は、この結果を知るまでは、渡来系が日本列島へやって来て縄文人と混血して弥生人になったと思っていました。しかし、実際は中国、朝鮮半島、東南アジアなどで、広範囲に縄文人とすでに混血していたことになります。
以上のことを類推すると、日本人の祖先は、縄文や弥生時代にすでに様々な人種や文化を受け入れて来た経緯があったのだと思われます。そう考えれば、私たちは神道でも仏教でも儒教でもキリスト教でも、なんでも受け入れて享受できるのは、祖先たちの経緯を見れば当たり前のことかもしれません。
日本人と森
そして、日本人の祖先は、豊な自然を崇拝して生活してきました。日本全国にある鎮守の森がそれを代弁しています。日本人は、巨木を見るとそれに精霊が宿っているというふうに感じました。アニミズムの感性を持っているのです。ヨーロッパでも、古代のケルト人の感性がそうでした。
例えば、イチョウの樹があります。イチョウは、二億五000年前に栄えた樹木です。恐竜は絶滅しましたが、イチョウは中国の南部にかろうじて生息し、生き延びていました。そして、千年前に日本へ持ち込まれたそうです。イチョウは、立派な巨木になるので、日本人のみんなに敬われ、神社やお寺や学校の校庭などに植えられて増えていったのです。
そして、イチョウは、17世紀にオランダの東インド会社のドイツ人の医師により、ヨーロッパへもたらされることになります。今では、英国やヨーロッパ大陸やアメリカなど、全世界に広がっています。日本人の自然崇拝が、絶滅寸前のイチョウを奇跡的に救ったのです。
以上のことからも分かるように、日本人の自然崇拝は、日本にある古来からの神聖な森―熊野の森や、伊勢神宮の森や、出雲大社の森などを大切に保護してきました。これら手つかずの森には、不思議な静寂さがあります。それは、聴覚では聴き取れない高周波の音で、現代科学で、ハイパーソニックサウンドと呼ばれています。その効果(ハイパーソニック・エフェクト)は、アルファ波を上昇させてリラックスさせ、ナチュラルキラー細胞の活性化とアドレナリンを減少させることが分かっています。このハイパーソニックサウンドは、都会では絶対ない高周波の音で、世界の中では日本の古来からある神性な森と、熱帯雨林にしか存在しないそうです。