石垣島のリラックス

石垣島のリラックス 2


南インドへのいざない

 白保地区の宿から白保公民館へいく途中、サンゴで出来た石垣の続く道を歩いていると、突然、南インドを思い出しました。暖かいそよ風と、空気と静かな村のたたずまいと、神聖な御嶽(うたき)の森。色あざやかな花々、ハイビスカス、ブーゲンビリアや、道端の可憐な草花や、美しい夜空の星々。ガジュマルや熱帯の樹木の景観が、南インドへいざなうのです。

 思い起こせば、45年ほど前に、インドを放浪していたときでした。ネパールからカルカッタ(現コルカタ)へ移動中に急性肝炎になり、それでもスリランカを目指して旅をしていました。脂っこいものが食べられなくて、毎日バナナばかり食べていました。とうとう歩くのがつらくなり、マドラス(現チェンナイ)近くのマハーバリプラム(現マーマッラプラム)という地で休養をよぎなくされました。
 そこは、ひなびた海岸の集落でした。波うちぎわにヒンドゥー教の海岸寺院があり、村の中には、所どころに点在している巨大な岩を利用して、動物や家などを立体的に彫り出し、岩の表面にはレリーフが刻まれてあり、芸術作品としても優れていました。今では、世界文化遺産に指定されていますが、祭りがなければ閑散とした漁村でした。
 毎日私は、朝起きて、水平線から登る太陽を見て、夕刻岩山から地平線へ沈む真っ赤な楕円形の太陽を見て過ごしました。
 そんな時でした。私は、突然周りの景色や風や匂いに、名状しがたいなつかしさが込み上げてきて、涙がぽろぽろと流れました。私は、デジャヴュ(既視感)を体験したのでした。
 そのような体験を思い出し、私には、石垣島の白保地区が、不思議な親しみをもって感じられるのでした。