竹富島で日本人のルーツを考える

「量子もつれ」について考えたこと 1


第一章
NHKスペシャル「量子もつれ/アインシュタインの最後の謎」を見て
「量子もつれ」とは一体なんだろう? と思っている人へ


 最初に量子論を考える前に、物理学の理論の変遷を、古代から現代まで頭に入れておくことにします。

 二千数百年前に、古代ギリシアでは哲学者デモクリトスが、この自然界はすべて目に見えない粒(原子・アトム)からできていると説明しました。また数学者ピタゴラスは、自然界の様々なものは振動の数学によって表現できると考えました。

 ギリシアで生まれたこの二つの理論は、古代ギリシア・ローマ文明が衰退すると共に消滅してしまいます。それはキリスト教の一神教がでてきたからです。キリスト教の教義に合わないという理由で、デモクリトスなどの古代の膨大な科学書は全部焚書になりました。彼らが記した言葉は、プラトンやアリストテレスなどが引用したことで、私たちはわずかに知ることができるのです。

 そのために、宇宙を知る理論の枠組みは、ほぼ1000年間忘れ去られてしまい、その間、迷信や魔術などにおおわれてしまったのでした。

 それから17世紀になって、ケプラーやガリレオが宗教的迫害に遭いながらも宇宙を説明する理論をつくりました。その理論をニュートンが完成させ、実験の天才ファラデーと理論の天才マックスウェルが電気と磁気を解明し、電磁気学が生まれました。
 その電磁気学が生まれた後に、アインシュタインが、光をはじめとするすべての電磁波は 「粒」 からなっていると主張しましました。これが世界初の 「量子」 になり、光の量子つまり 「光子」 と呼ばれることになりました。それから彼は 「相対性理論」 を生み出し、量子物理学の土台ができてゆくことになります。

 20世紀の初頭、科学者たちは、目に見えるほとんどの現象を数式で表すことに成功して、ニュートン力学の数式からさまざまな道具が発明され、まさに新しい文明が花開こうとしていました。

 ところがアインシュタインの 「相対性理論」 は、今まで完全だと思われていたニュートン力学を、根本からくつがえしてしまったのです。
そして量子物理学に、突如ほころびが見つかり始めます。それは分子や原子などを巡るとても小さい世界での奇妙な現象でした。

 物理学者たちは、二重スリット実験で、光の 「粒」 が、見えていない時は 「波」 になるという不思議な振る舞いを発見します。そうした性質を持つものを全部まとめて「量子」 と呼ぶことにしたのです。

 これは 「だるまさんが転んだ」 の遊びに似ています。鬼が目を覆った瞬間、子供たちはどこにいるのか分からなくなります。このようなどこにいるのか分からない振る舞いを、物理学者は 「波」 と呼んでいます。
 子どもたちは、どこにいるかもどこにいないかも分かりません。しかし鬼に見られた瞬間に姿が現れて、いる場所がはっきりと分かります。

 このなんとも不思議な量子の世界で、物理学者は、子供たちが大体どこに現れるかを予測しました。そして、その確率を予測する数式を生み出しました。これが 「波動方程式」 です。

 感覚的には理解できない量子の世界で、この波動方程式の登場により、ミクロの現象になんとか説明がつくようになりました。この理論は 「量子力学」 と呼ばれ、世界中で使われるようになっていきました。

 ところが、こうした量子のふしぎな世界観に決して納得しなかった人物がいました。相対性理論を提唱したアインシュタインです。
 アインシュタインは、宇宙の全ての現象には原因があって、結果があり、その過程も明確なはずだと信じていました。
 彼は、神が宇宙とサイコロ遊びをするはずがない。量子の理論はあまりにも不完全だと思っていました。そこで彼は、存在が確率的で、あやふやな量子の理論を痛切に批判したのです。その批判は、メディアも巻き込んで大論争に発展しました。

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