コロナ禍の自粛生活で、想念を検証する

コロナ禍の自粛生活で、想念を検証する 2


 私たちは、そのネガティブな想念に気づくまでは、それに翻弄されてしまうのですが、その想念でさえも、実は存在する理由、つまりその想念を改善して生きるという理由があるのです。そのことに気づき、そうなった事情を突き止めて、その想念を改善する努力は、自分自身の責任なのです。

 その気づきによって私たちは、自分のネガティブな想念を検証してみることができます。心の内なる状態や意図、期待などを調べると、困難や問題点も見えてきます。一体自分はどこへ向かおうとしているのか、それらは物理的に起こる出来事の本質を明確に示しています。物理的に存在するものは、初めに想念や感情の中に存在したものであって、それ以外の関係はないのです。


プラス思考とポジティブ思考

 プラス思考やポジティブ思考は、実際に役に立ちますが、習慣になって気がつかないネガティブな感情や、攻撃性、心の抑圧といった性質をどう扱うか、また性格的にポジティブになれない人はどうすればいいのかといったことまでは考慮に入れていません。

 以前、拒食症に陥って苦しんでいる若い女性がいました。何回も自殺未遂をしたという彼女に、プラス思考の話をすると、「プラス思考もポジティブ・シンキングも、もう聞き飽きました。色々な本を読んで実践しましたが、上手く行くどころかよけい苦しみました」 というのです。
 確かに、それらの本では、ポジティブでありなさい、思いやり深くありなさい、強く、楽天的でありなさい、と教えますが、彼女にはそれらがどうしてもできなかったのです。彼女には、自分のどうしょうもないネガティブな感情や、心の動揺の抑圧から脱出するにはどうすればいいのか、今はまっている悪循環を断つにはどうしたらいいのか皆目見当がつかなかったのです。ただ楽天的でありなさいというだけでは、彼女には通用しなかったのです。

 すべての生命はつながっているので、自分が楽天的でいれば、全体にも大きな影響があるのは確かです。でも、拒食症の彼女のように、「もし体重が30㎏を切ったら、もう自分はだめかもしれない」 というネガティブな考えが忍び込んできたら、「何で自分はこんなふうにしか考えられないのだろうか、どうせ私は普通の人と違って愚図で最低な人間なのだ」 と自暴自棄になり、自分を責めてしまいます。
 「ネガティブな考えが、人生にネガティブなものを引き寄せる」 という説のせいで、すでに苦しみを経験している人たちが一層ひどい思いをしてしまいます。さらに、自分の考え次第で、 もっとネガティブな状況を引き寄せてしまうかもしれないという恐怖感も生み出してしまいます。そうして絶望を感じて、自死を選んでしまうのかもしれません。
 もっとも日本人の遺伝子には不安遺伝子が多くあり、アメリカ人は少ないことが分かっています。縄文時代から災害の多い日本列島に住んできましたから、心配性で警戒心が強くなるのはあたりまえかもしれません。楽天的な人は死んで、生き残ってきた人々が、不安遺伝子を受け継いできたのかもしれません。

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