コロナ禍の自粛生活で、想念を検証する

コロナ禍の自粛生活で、想念を検証する 3


 もし私たちが、不愉快な状況を生み出したのが、自分のネガティブな想念のせいだと信じれば、私たちはびくびくするようになるに違いありません。そして自分が悪い、自分のせいだと自己を責めてしまうかもしれません。私は、苦しんでいる人たちが、このようになったのは自分のせいだといって、自分を厳しく責めて苦しんでいる多くの姿を見てきました。
 多くの人々は、ネガティブな感情経験に蓋をします。そしてポジティブな感情だけを「肯定」しようとします。実際には感じているのに、感じていないふりをして、自らの経験を否定するのです。人間は自己への肯定によって、どんな情動をも自由に去来させることができるのです。
 昭和天皇から、「数学はどうしてやるの?」 とお声をかけられて、「数学は、情緒でやります」 と答えた天才数学者の岡潔も、感情について小林秀雄との対談で面白いことを言っています。「数学は知性の世界だけに存在しうるものではない。何を入れなければ成り立たぬかというと、感情を入れなければ成り立たぬ。」(『人間の建設』新潮社版)
 感情とは、絶えず変化しつづける自然な気持ちの在り様で、意識に多様性をもたらし、その強力なエネルギーのパターンは、人間の生命の多様性を表しているのです。ですから感情に、いい感情も悪い感情もないのです。感情は、ただ感情であるだけです。感情は、ただ感じていれば、宇宙の存在の海に溶け込んでいきます。ある感情だけを肯定して、別の感情を否定すると、そこに壁を打ち立てて人格を歪めてしまいます。魂の入り口である感情を否定することは、人間性を否定することにもなるのです。


自分を許す

 ポジティブなものを引きつけるには、単に陽気でいればいいというのではありません。もしあなたに、動揺することが起きたら、あなた自身にネガティブな気持ちになってもいいのだと自分の心に言い聞かせてあげてください。そしてそんな自分を許してあげてください。なぜなら、自分の本当の感情を封じ込めるよりも、許すほうがはるかによいからです。それは、自分が感じていることを抑えるのではなく、受け入れることになるからです。判断せずに、許すという行為は、まさに自分への愛の行為です。自分に優しくするという行為は、楽天的なふりをしているよりも、喜びに満ちた人生を創造する上で、ずっと役に立つのです。
 私は、動揺している時に自分自身はどう感じているかが、人生の状況を決める上で一番大切なことに思えます。つまり、自分自身に正直でいる方が、ポジティブを装って自分の本心を抑えているよりもずっと大切なのです。

 私たちは、宇宙と一つです。私たちの目的は、ただ本当の自分自身で在ることです。外の世界は、自分の内側にあるものの反映にすぎません。私たちは、仕事や生活や友達づきあいでうまくいかなくなると、どうしても自分を責めてしまいます。うまくいかないのは、自分のせいなのだと思って、自虐的になり、他人と比べたり、競争意識を起こしたり、外側ばかりに注意を向けてしまいます。

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