太古、人類の祖先は古細菌であった 2-4

太古、人類の祖先は古細菌であった 2-4

 なかには、最重度の脳障害児になっても、詩集を出版した人もいます。1992年生まれのみぞろぎ梨穂さんです。19歳のとき、「ご覧の通り何もできない私ですがぼんやりと生きてたわけではありません。ずっと私は人間とは何なのかということを考えてきましたから、別に世の中の人が何と言おうと私は私らしく生きてきました。」 と言っています。

私の生きる意味
私は 長い間 生きる意味を探してきた
なぜ 私は生まれてきたのだろう
なぜ 私は今ここで
病院の中で静かに生きているのだろう
きっとその答えは誰にもわからない
今 少しずつ わかり始めてきた
私はどんな姿だった
どんなに不自由な身体だった
ちゃんと言葉がある
ちゃんと心がある
そう言う事を伝えに来たのかなあと最近思う
また 私は私の私らしさの旅に出る
新しい私を見つけるために
今日もまた旅に出る
      

『約束の大地―想いも言葉も持っている』
みぞろぎ梨穂著、青林堂


 私は、頭は空っぽで、何も考えていないと思われていた身体障害者たちが、実は心に豊な世界を持っているという事実に、誰もがレンマ的知性を持っているのだという確信を得ました。

生物を階層的に見る
 ここで、もう一度生物の系統樹を振り返って見ましょう。
  • 階層1: 
    38億年以上前に、大腸菌などの原核生物が現れる。細胞内部で分子の多数決で、空間と時間の認識をする。
  • 階層2: 
    20億年以上前に、ゾウリムシなどの真核生物が現れる。細胞内部のネットワークで空間を認識。生物時計で時間を認識。
  • 階層3: 
    12億年前に、植物・菌類・カイメンなどの多細胞生物が現れる。細胞と細胞が対話し、体液共有して空間と時間を認識。
  • 階層4: 
    6億年前に、神経系・神経節を持つクラゲ・ミミズなどの多細胞生物が現れる。神経系で2次元的な空間を認識。先祖から受け継いだ本能で時間を認識。
  • 階層5: 
    5億年前に、脳・神経節を持つ昆虫が現れ、「意識の神経基盤」が登場。3次元の空間認識と短期記憶ができる。
  • 階層6: 
    4億年前に、巨大化した脳を持つ魚・鳥・哺乳類が現れ、空間認識がさらに発達し、長期記憶ができる。 
  • 階層7: 
    600万年前、大脳皮質がさらに発達したヒトが現れ、想像力や思い出が可能となる。

 以上は、生物学者団まりなが、生物を階層的に分析した方法ですが、こうし階層的に見てくると、生物は細胞からは始まり、何十億年もの間、親から子へ切れ目なく連綿と繋がっていて、ヒトは独立した特別な存在ではなく、複雑に絡み合った網の目の一つにすぎないことがよくわかります。

 このように、階層的に進化した細胞から巨大な生物まで、あらゆる生物に感覚があり、主体性があるのですが、団は、細胞の一つひとつに主観的な 「意志」 があると主張して、学会から異端視されました。団は、「細胞が私たち人間と同じように、思い、悩み、予測し、相談し、決意し、決行する生き物だということです。」 と述べ、そして、「細胞が ゛私たちと同じ゛ ように思い悩んだり、決意するなどの ゛意志゛ を持つという言い方をすると、とたんに大きな抵抗にあうことになります。」 と言っています。(『細胞の意志』団まりな著、NHKブックス)
 こうして、原初の生物が持っていた感覚世界から、私たちの意識は、階層をなして成長し発展してゆき、やがてホモサピエンスの脳は、前頭連合野が発達し、右脳と左脳ができていきます。

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