コロナ禍で、自分と向き会う日々

コロナ禍で、自分と向き会う日々 1

15年前の夏合宿の思い出 

 コロナウイルスは、私たちの生活スタイルを大きく変えたといえるかもしれません。作家の五木寛之さんは、夜の店が早く閉じるので、家に帰るのが早くなり、早寝早起きになったそうです。朝早く起きると、清々しくて気持ちがいいというのです。今までは朝方に寝て、夕方に起きていたというのですから、生活スタイルが随分と変わったものです。

 私も、今までの生活が大きく変わりしました。今まで忙しくて時間がなかったのが、時間がゆっくりと感じられます。そのゆっくりした時間を使って、今までの自分を振り返って見たり、荷物を整理し、処分したりしています。
 何十年と溜まった荷物を整理していくと、いままでずいぶんと色々なところへ出かけたなということに、今更ながら驚きます。そして、ふと手にした書類を見ると、それは2005年の長野の飯綱高原でのヨガ気功教室の夏合宿の感想文集でした。

 思い起こせば、もう15年も前になるのだ。60種もある呼吸法を、中でも高度な呼吸法をどう教えるべきかと考えた末、なんとかムドラー行法のテキストを作りました。ちょうどその頃、毎年夏にモナコへ教えに行っていた教室が終わったので、ロンドンから日本へ夏合宿として教えに来ることができたのです。
 その三泊四日の感想文を読むと、参加者のヨーガを学べる喜びの気持ちが、素直に現れています。参加者の中には、10歳で参加した男の子もいました。こう書いています。

 「ヨガはこの合宿で初めてやりました。一泊二日で帰るつもりだったけれども、ちょっと参加してみて、つづけてみたいなーと思いました。これからずーとつづけるかどうかは、わからないけれど自然にかこまれてこの水輪で初めてヨガをやってとても気持ちがよかったです。」

 10歳の少年が足を組んで、ちんまりと座っている姿が、ほほえましく目に浮かんできました。その後少年は、大学へ進学してラグビーをやり、困ったときには瞑想をし、今では商社マンとして活躍しているという。またある参加者は、こう記しています。

 「飯綱の 自然の恵み 賜りて 
蝉も一緒に ブラーマリー」

 私は、この短歌を読んで、飯綱高原でのヨーガ合宿の風景がまざまざと蘇ってきました。
 飯綱高原は、新幹線の長野駅から山を登って、タクシーで30~40分くらいですが、飯綱に着くと標高千メートルほどの高地なので、涼しいのです。ところがこの夏は猛暑で、蝉の鳴き声がところ狭しと鳴り響いていました。ロンドンでは蝉はいませんので、何十年ぶりに聞く蝉の鳴き声が、どことなく懐かしく感じられました。

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