ヨーガを生きがいとして 5
思い込みで病気をつくっている人
私のもとに次のような様々な方々が、気功の施術を受けにきます。「私には、セロトニンが少なすぎるのです」、「どうも偏桃体が活発すぎるようです」、「父親もそうでしたが、私には遺伝子的にアルコール依存症になるリスクがあるようです」、など自分を分析します。このように生物学用語で自分を分析し始めると、自分は変わることができない、すべては決まっていると思い込んでしまいます。
ある実験では、被験者に 「アルコール依存症になるリスクの高い遺伝子をもっている」 という、事実ではないことを告げた場合、被験者は飲酒をさけることができなくなったそうです。また故意にうつや不安障害の遺伝子的リスクがあると告げられた被験者は、自分はもう回復しないかもしれないと悲観的になってしまったそうです。
このような状態になることを、「宿命本能」 が発動したといいます。宿命本能は、スウェーデンのハンス・ロスリング教授によって名づけられました。自分自身は変わることができない、ある一定の精神状態になる宿命だった、すべてがあらかじめ決まっていると思い込んでしまうことをいいます。
脳は、自分が体験しているできごとに、常に説明を探します。つじつまの合う物語を作り出し、躍起になって自分の人生に合うような物語を探そうとします。そうして自分の人生を理解し、予測しようとします。例えば、医師からうつ病と診断されると、そのたった一つの診断名で、その人は 「私は、うつ病なのだ」 と思ってしまうことがあります。つまり宿命本能が発動するのです。
思い込みの強い人は、自分の病状をこの宿命本能に振り回されていないかどうかを考えてみてください。そしてもし宿命本能に翻弄されていることが分かったら、ヨーガをやって元気になっていく自分の姿を、イメージで思い描いてください。そうすれば思い込みがつくった病気から抜け出すことができるでしょう。人生の一時期に大きな不安を感じたからといって、それが一生続くわけではないのですから。
また、思い込みがすべて悪いというわけではありません。よい方へ考えればよい方へ働くのです。たとえば、プラセボ効果(プラシーボ効果)です。うどん粉で作った偽薬でも、効くと思って飲むと、本当の薬と同じような効果があることが知られています。