内臓でヨーガをやるとはどういうことか?

内臓でヨーガをやるとはどういうことか? 3


皮膚は最大の臓器
 私たちは、通常は感覚は皮膚で感じます。皮膚は、実は人体の中で最大の臓器です。全身に広がる皮膚は、たたみ約一畳分、重さが3kgほどあるそうです。『驚きの皮膚』の著者である傳田光洋さんのお話では、この皮膚には、光や、音や、味や、匂いを感じるセンサーがあり、お線香の白檀の香りを皮膚が感じると、傷の治りが早くなるそうです。

 愛情ホルモン、幸せホルモンと言われているオキシトシンは、脳から分泌されますが、最近皮膚からも出ることが分かっています。また、皮膚をさすると一酸化窒素(NO)が出ることも分かっています。ですから、アーサナで身体をゆるめて、シャバアーサナで横になるだけで、床に心地よく触れた皮膚からオキシトシンが出て幸せを感じ、また皮膚から一酸化窒素が出て血管が広がり、血行がよくなり、体が温かくなるのです。アーサナの後のリラックスが、ぽかぽかして気持ちがいいと感じるのは、このように確固とした理由があったのです。

 このようなことから皮膚は、「体表の脳」とか、「0番目の脳」とか言われたりしています。(ちなみに2番目の脳は腸です) ですから皮膚には、脳があり、知恵があり、知能があるのです。
 この全身を包んでいる皮膚という臓器に感覚がなくなったら、私たちは自分の存在が消えてしまうのです。これは、実験で確かめられています。アイソレーション(感覚遮断)・タンクがあって、人体と同じ温度に温められた高濃度の海水に裸で入り、光と音を完全にシャットアウトすると、全身の皮膚の感覚がなくなり、自我が消えていくという体験をするそうです。この体験は、私たちに、自分の存在が分かるのは、皮膚に包まれているからだと教えているのです。

皮膚と意識
 ゾウリムシのような単細胞生物は、脳はありませんが、細胞膜で感じて、生きるために必要なことをやってきました。それから進化して人類が生まれてきました。細胞膜は、人類の皮膚に相当します。人類は、皮膚で感じることで、生き延びてきました。素肌の人の方が皮膚で危険を察知する情報が多く、生き延びる確率が高かったので、進化の過程で人類は体毛を無くしていったと思われます。一説には、素肌が脳を発達させたのだといいます。

 やがて全身で感じる皮膚の情報が増えてくると、それをまとめて整理する必要が生じ、脳が発達していきます。脳では判断する知覚が生まれ、それをまとめる意識が芽生えてきます。
 最初、人類の意識とは、神の声だったといいます。人類は、右脳で感じる人智を越えた存在からのメッセージを、神の声として受け取って生きてきました。それが異文化の交流や、文字の発明で、約3,000年前に、神の声は、意識に変わったというのです。

 意識が生まれると、集団がより安全に生きていくために、システムが生まれていくのです。やがて意識が国家や軍隊のシステムを作る方向へ向かったのは、最初は人間の生存のためでしたが、現在はそれが暴走して、災厄をもたらすものになっているのです。

 意識は、意識した時にしか現れません。私たちは、日常生活では意識して行動していません。歩く時も、いちいち意識して歩いていません。意識したら歩けません。無意識です。意識しない方が、スムーズにことが運びます。楽器も、意識したら間違えますが、無心になれたら上手く弾けます。舞踊も武道もスポーツも、無念無想になれたら、最高の演技が発揮されます。それは、意識ではなく、身体に備わっている英知・感覚がやってくれるからです。