竹富島で日本人のルーツを考える

AIの時代に幸せに生きるヒント 5


「態度価値」の実現

 最後に「態度価値」ですが、これを思うといつもある青年を思い出します。以前も紹介したことがありますが、40代の男性で悪性リンパ腫が全身に転移して、医師から死を宣告されていました。深い絶望を感じて、自分の人生を恨むばかりでした。まったく体を動かすことができない彼に、「創造価値」や「体験価値」などありません。
 そこで彼に、この広い宇宙で、あなたという人物はたった一人しかいません。必ず生きる意味があります。自分の生きる意味を見つけてください、と話しました。すると私の言葉が心に届いたのか、彼は生きる意味を見つけたのです。彼は、自分がいつも悲しい顔をしていると、お掃除のおばさんも看護師も医師も悲しい顔をすることに気づきました。そこで笑顔をつくることならできる、笑顔をつくると周りの人たちがみんな笑顔になると分かったのです。彼は、「態度価値」によって、周りの人に笑顔を与えるという生きる意味を見つけたのです。
 この青年の「態度価値」は、愛ともいえます。愛とは人から受け取るだけでなく、自分から与えることで成就されるからです。これは人間のもつ最も偉大な能力の一つです。その結果、彼は心が肯定感に満たされて、生きていることが楽になったのです。
 この青年の行為からも分かるように、たとえどんなに惨めな境遇で生きたとしても、私たちの態度しだいで、宇宙にたった一人の自分がそこにいたからこそ実現できたのだと確信できれば、不幸に思えた人生にも感謝して、残された日々を安らかな気持ちで過ごすことができるのです。 この青年は、今まで自分の辛さだけでいっぱいになり、自己を過剰に観察して卑下していました。そして生きる意味を見つけるために、眼差しを心の内から外に向けて、ようやく自己の過剰観察から解放されたのです。
 この青年のように、今まで決めつけていた視点を変えることによって、私たちは人生最後の日であっても、新しい意味を見つけることができるのです。これによって「態度価値」が実現されるのです。

 この「態度価値」は、人間が苦しみを背負いながら自分自身へ成長していくだけではなく、人間として豊かになることも意味します。つまり真理に向かって精神的に成熟していく重要性を持っています。
 そうして精神が成熟していくと、ものごとの先の方まで見通せるようになっていきます。今まで重要だと思えた出世や財産、名誉欲や名声は、人間として豊かな人生を送るためには大きな意味はない、ということが少しずつ分かるようになります。
 そうして何が本物か何が偽物かを識別できるようになり、「人生の中で何が一番大切なことなのか」「それを実現するために自分はどんな意味を実現したら良いのか」「どのような態度で生きていったら良いのか」を少しずつ理解するようになっていくのです。

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