竹富島で日本人のルーツを考える

言葉から見えてくるもの 8


言葉のある世界(左脳)と、ない世界(右脳)

 言葉は、脳から見たらどうなのでしょうか? 脳には左脳と右脳があります。左脳は言葉や論理を使いロゴス的です。一方右脳はイメージや直観を得意としてレンマ的です。
 脳科学者のジル・ボルト・テイラーは、脳出血を起こして左脳の機能をすべて失いましたが、奇跡的に右脳は機能しました。彼女は左脳が停止した世界と、言葉のない右脳の世界を、実際に自分の脳で体験しました。
 彼女は、「左脳がついに完全停止を余儀なくされたとき、私は右脳の安らかな意識に包まれ、そこでは危機感がすっかり失われていました。私の右脳は、過去の後悔も、現在の恐れも、未来への期待もなく、今ただこの瞬間だけに存在していました。」 と述べています。(『WHOLE BRAIN 〈脳全体〉』 日本語訳 『「脳」の動かし方』竹内薫訳、NHK出版を参照)

 左脳がオフライン状態だったのに、なぜ脳出血に襲われた朝のできごとを思いだせるのか?という疑問に、彼女は左半球の血管が破れたあと、四時間かけて、ゆっくりしたパイプの水漏れみたいな感じで、じわじわと回路を遮断したから、右脳がビデオみたいに、あの朝の発作の記憶を再生する能力を保てたといいます。

 彼女は、左脳と右脳には2つずつ以下のような4つキャラクター(性格)がるといいます。
 左脳のキャラクターには、キャラ1。リーダーや自我。整理整頓好き。時間厳守。キャラ2。傷ついた子供の自分。不安、恐怖、怒り、自己嫌悪などがあります。
 また左脳は 「時の架け橋」 のような役割を担っていて、この瞬間から過去へ、ものごとを順序だてて考えるようにつくられている。靴を履く前にソックスをはく必要があることをちゃんと理解しているのです。
 一方、右脳のキャラクターには、キャラ3。無邪気な自分。好奇心、遊び心。今が大事。キャラ4。ありのままの自分。私は宇宙の一部などがあります。

 このように脳が二つの半球に分かれているのは理由があるという。左脳がなければ、過去も未来もないし、順序だった思考もできず、言語もない。自分の体がどこから始まり、どこで終わるかといった境界の感覚もない。左脳がなければ、体の外の世界でまったく機能しなくなってしまうのです。

 つまり左脳は、私たちに 「個であること」 を与えてくれるのです。
 一方、右脳は、私たちを人類全体の意識、さらには宇宙の広大で開放的な意識を結びつけてくれるのです。

 私たちが心のなかで争うのは、この二つの半球のキャラクターが働くからで、その結果左脳と右脳の対立に苦しめられるのです。
 たとえば夏休みに宿題がでます。左脳が今から宿題をやるべきだ。後になってからでは時間がなくなり苦しむぞ、いまやれ、といいます。右脳は、いやまだ大丈夫だ。今を楽しんで遊んでいいのだ、とささやきます。

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