量子論の不思議な世界 1
チームラボのデジタルアートの衝撃
真っ暗な部屋の中へ入ると、そこは池になっていて、水がすねまで漂ってきます。
その中を、色鮮やかな数十匹の錦鯉が、素早く、あるいはゆったりと輪を描いたり、流線型になって、勢いづいて泳いできます。近づいてきた一匹の金色の鯉に手を触れると、その瞬間、鯉は綺麗な花びらに変身しました。
錦鯉は、三次元の映像でつくられていて、水の中を泳いでいるのでした。
それから、別の真っ暗な広い部屋に入りました。
その部屋の空間には、空海の御真筆が三次元に浮かんでいます。その筆で描かれた漢字が変容して、伸びたり、縮んだり、広がったり、流れたり、いろいろな草書ふうの字体に変幻して、次から次に現れては、消えていきます。
また高野山で修行を積んだ僧侶の読経が響き、それが憎いほど空間に描かれた空海の御真筆に溶け合って、生きているように聞こえてきます。その空書から、空海の声が聞こえてくるような錯覚になります。
しばらく床に座り、空海の空書に見入っていると、突然、空中に浮いている感覚に襲われました。これは、体外(幽体)離脱の一種といえます。
この空中に浮かんだ感覚で、私は20代にイスラエルの死海で、沈まない海面に漂っていた感覚を思い出しました。
そのような時、眼を閉じると、目の前の映像は消え、眼を開けると映像が飛び込んできて、見たときに存在し、見ないときには存在していないような気がしてくるのでした。