量子論の不思議な世界

量子論の不思議な世界 3


(量子論など難しそうで、読むのが嫌だという人は、後半にある「量子論を自分の体験に当てはめて考えてみる」からお読みください。)

量子論について

 最初に、量子力学とは、一体何なのでしょうか? 学者の説明では、量子力学を一言でいえば、量子論に基づいて物質現象を記述するための 「数学的な手段」 なのだそうです。
 それでは、この量子とは、一体何なのでしょうか? 量子とは、クオンタム(quantum)という英語の訳で、「小さな固まり・単位」 という意味です。ミクロの物質が持つエネルギーの量(大きさ)が、小さな固まりになっているというのです。そして量子論とは、ミクロの世界に始まって自然界全体のしくみがどうなっているのかを表した 「考え方」 や 「思想」 なのです。

 現代人は、あらゆる物質は原子という小さな粒が集まってできていることを知っています。原子は、英語でアトム(atom)と言います。古代ギリシアの哲学者デモクリトス(前460年ころ~前370年ころ)が、物質を構成している究極の微粒子を 「分割できないもの」(atomos)と名付けたことに由来しています。

 近代科学において原子の概念が導入されたのは、19世紀初めのことでした。この極小の原子の世界とは、1ミリメートルの1000万分の1より小さい 「ミクロの世界」 のことです。それより大きな世界は、「マクロの世界」 です。
現代になり、捜査型トンネル顕微鏡が発明されて、ようやく原子一個の像を見ることができるようになりました。そして、原子は分割できないものではなくて、内部にさらに小さな構造を持っていることが分かってきました。

 つまり原子は、原子核とその周りを回る電子に分割され、さらに原子核は陽子と中性子からできているというのです。それらは、さらにクオークと呼ばれる素粒子から成り立っているというのです。原子核は、本などの図でみるとかなり大きく描かれ、その周りを電子が回っている図が描かれています。実際は、原子核の大きさは1兆分の1㎝。原子核を一円玉としたら、一円玉は地球三つ分の大きさになるそうです。
 この極小のサイズが、すべての物質を形成しているのだとすると、人間の身体も建物も地球も中身はスカスカの状態で、この現実の見える世界と思っているのは、実はホログラムのようなものではないかという気がします。物質の中身は、ほとんど空っぽの状態としたら、仏教でいう 「色即是空」 のような世界と言えなくもないのです。

 私たちは、通常目に見える世界を観察してきました。太陽の公転運動、自動車、飛行機などのマクロの目に見える物体法則は、十九世紀の終わりにニュートンが作った古典力学で計算し、結果の予言ができます。このニュートン以来の 「常識」 であった従来の物理学を古典物理学と呼びます。

 一方、目に見えない世界を観察する物理学が始まります。二十世紀の初め、現代物理学の二本の柱―量子論と相対性理論―が現れ、現代物理学は大きく変わり、             この二つの理論により、物質の究極の微小構成要素、素粒子のしくみから、マクロの極限である宇宙の創成まで解明されようとしています。
 相対性理論は、アインシュタインという天才によって作り上げられました。ブラックホールや宇宙の創成などを支配する法則なので、一般的な人気を博しやすいのですが、量子論は、デンマーク人のボーアなど多くの科学者が協力し、競争しながら作り上げられた法則で、理解するのが相対性理論よりも難しいようです。

 量子論は見えない世界の理論的な想像の話ばかりで、聞いていると実体のない夢のような話に聞こえてきます。しかし、この見えない世界が、見える世界の基礎になっているので、この量子論を基準に考えないと本当の世界は理解できないのです。事実、遺伝子やDNAの構造を決めているのも量子論であり、原子炉の中の核分裂、太陽の中の核融合なども、量子論に従って起こっているのです。
 現実に私たちは、最近のエレクトロニクスの進歩によって、コンピュータや 「ハイテク」 と呼ばれる分野やその製品などを数多く利用しています。その心臓部と言われる半導体は、すべて量子論の産物であり、そこに使われている半導体、その半導体チップの中を支配している物理法則は、量子論の結晶なのです。

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