生きて死んで、そして魂のゆくえ 6
古代から現代までの物理学の理論の変遷
それでは簡単に物理学の理論を古代から現代まで俯瞰してみましょう。
二千数百年前に、古代ギリシアでは哲学者デモクリトスが、この自然界はすべて目に見えない粒(原子・アトム)からできていると説明し、数学者ピタゴラスが自然界の様々なものが振動の数学によって表現できると考えました。
ギリシアで生まれたこの二つの理論は、古代ギリシア・ローマ文明が衰退すると共に消滅してしまいます。それからキリスト教の一神教がでてくると教義に合わないということで、デモクリトスなど古代の膨大な科学書は全部焚書になりました。彼らが記した言葉は、アリストテレスやプラトンなどが引用したことで、わずかに知ることができるのです。
宇宙を説明する理論の枠組みは、ほぼ1000年の間忘れ去られて、その間、迷信や魔術の信仰におおわれてしまったのです。
それから17世紀になって、ケプラーやガリレオが宗教的迫害に遭いながらも宇宙を説明する理論をつくりました。その理論をニュートンが完成させ、実験の天才ファラデーと理論の天才マックスウェルが電気と磁気を解明し、電磁気学が生まれました。その後にアインシュタインが、光をはじめとするすべての電磁波は、「粒」 からなっていると主張しました。これが世界初の 「量子」 になり、光の量子つまり 「光子」 と呼ばれています。それから彼は 「相対性理論」 を生み出し、量子物理学の土台ができていきました。
この量子論は、完全だと思われていたニュートン力学を、根本からくつがえしてしまいました。
この神秘的で奇妙な量子の世界は、奇妙すぎて理解しがたいのです。多くの量子現象のなかでも、「量子もつれ」 は最も奇妙な現象で、私たちを量子論の理解から遠ざけるのです。
「量子もつれ(エンタングルメント)」 とは、遠く離れた二つのものが、あたかも語り合っているかのように、ある種の奇妙なつながりを保つのです。この状態をもつれているというのです。
たとえば、光の粒などの量子が、お互いに何光年も遠く離れていても、片方の量子の状態が青に変わると、もう片方の状態も瞬時に青に変化するという現象です。この不思議な現象は、その生みの親であるアインシュタインでさえ 「不気味な遠隔操作」 と呼んで否定しつづけましたが、「量子もつれ」 は、2022年に実際に起きることを証明した3氏にノーベル物理学賞が授与されています。