生きて死んで、そして魂のゆくえ 8
宇宙の誕生
ミクロの世界では、粒子とその対になる半粒子が生まれ、互いにぶつかっては消滅し、沸騰するお湯の気泡のように、無数の粒子が生まれては消え、消えては生まれ、この無限の繰り返しの中で、真空エネルギーは微妙なバランスを保っていました。そして138億年前、真空エネルギーの正負のバランスにわずかな 「ゆらぎ」 が生じて、突然爆発しました。この大爆発(ビッグバン)により、すさまじい勢いで真空エネルギーは膨張し、豆粒ほどの大きさの真空が、瞬時に太陽系全体にまで膨れ上がったのです。これが宇宙の始まりであり、その結果としてこの宇宙が誕生したというのです。
そしてここから興味深い仮説が導かれました。その仮説では、この宇宙に普遍的に存在する 「量子真空」 の中に、「ゼロ・ポイント・フィールド」 と呼ばれる場があります。そこは、量子真空から量子を生み出し、また吸収する場です。そして、その過程で量子が持っていた情報も記録されます。
量子真空、つまりゼロ・ポイント・フィールドは、この宇宙を作りだした最初の 「エネルギーの振動」 であり、「波動」 にほかならないのです。固くみえる物体でも、エネルギーの波動にすぎないのです。そしてこの量子真空は、この宇宙に存在するすべてのエネルギーの波動の源であり、この宇宙に起きたすべての出来事の記録庫でもあるのです。この場に、この宇宙のすべての出来事のすべての情報が 「波動情報」 として 「ホログラム原理」 で 「記録」 されているというのです。
このような量子論の宇宙誕生の説明を聞いていると、どうしても古代の叡智を思い出してしまいます。
何もない空っぽの空間に、未知のエネルギーが隠されていて、突然消えたり、生まれたりを繰り返す不思議な現象は、『般若心経』 の 「色即是空、空即是色」 を彷彿とさせます。また量子論では宇宙のすべての現象は、関係でできていて、物体や現象は関係によってのみ現れて、また消え去っていくという。これはまさに仏教の縁起であり、仏教の根本原理を示す教えと重なって見えます。
それに加えて量子真空、ゼロ・ポイント・フィールドには、宇宙で起きたすべての出来事の情報が記録されていることで思い出すのは、古代インド哲学の 「アーカーシャ」 と、仏教の唯識です。古代インドでは、宇宙のすべての情報がアカシックレコードとして記録されているといいます。また仏教では、意識の一番奥に、「阿頼耶識(アラヤシキ) があり、過去のすべての出来事と、未来のすべての原因が眠っていると考えています。
これでデモクリトスが、この宇宙はすべて粒でできているという最新情報を、なぜ古代に知ることができたのかという疑問は、きっと宇宙の記憶庫、アカシックレコードにアクセスできたからではないかと考えると腑に落ちます。
ではどうしたら量子真空内から情報を引き出すことができるのでしょうか? 世界の天才や発明家たちは、頭で考えているのではなく、ぼーっとしているときに発明や発見をしていますから、なにか変性意識状態になると宇宙の記憶庫につながるのかもしれません。
実際、発明王エジソンはうたた寝をして、手に持っていたものが床に落ちる音で、発明を思いついたり、化学者アウグスト・ケクレは、暖炉の前で浅い眠りをして、夢にでた蛇が自分の尻尾に噛みついてクルクル回転する様子をみて、ベンゼンの輪を発見したといいます。
またレオナルド・ダ・ウ゛ィンチは、睡眠中に特別な工夫をしていたそうです。アインシュタインは、頭で考えて相対性理論をつくったのではなく、霧にかすむ街灯の光を見て、ぼんやりと瞑想している状態にあったとき、自分の意識が光に乗り、見えた風景を論理的に説明したら、相対性理論になっていたといいます。
面白いのは、物理学者で発明家の二コラ・テスラです。彼はエジソンが恐れた天才発明家で、エジソンを凌ぐほどの発明をしました。これらの大発明は自分が発明したのではなく、外部からのテレパシーで情報を教えてもらったと正直にいってしまったら、世間から信用されなくなって、エジソンほど名前は知られていません。