生きて死んで、そして魂のゆくえ

生きて死んで、そして魂のゆくえ 11


魂のゆくえ

 私たちは、必ず死を迎えます。生命が死を選んだのです。古くなってキズがついた遺伝子を個体ごと消去して、新しい遺伝子を遺す必要の為に、死が生まれたのです。
 私たちを構成している物質は、死後も形を変えて存続していきます。分解された肉体は、養分として草木に吸収されたり、昆虫や微生物に取り込まれて大地にかえり、新しい生命の一部となっていきます。

 その草木が、太陽のエネルギーを得て酸素を作り、私たちは呼吸をしてその酸素を吸い、その空気は大気の循環によって地球全体をめぐります。夜空を見上げると、無数の星々が大きな星の重力に引っ張られて、銀河の中を動いていきます。この世界は、絶えず相互に、密接に作用し合っています。

 物理学の法則では、物質は創生も消滅もしないで、ただ形を変えるだけだと考えます。科学反応では、原子は組み替えられますが、その総数は変わりません。私たちの肉体を構成した原子や分子は、宇宙の中で別の形で存続し続けることになるのです。
 こうして私たちは死んでも、生きた痕跡は分子や原子に記録される形で、永遠に刻み込まれることを想えば、私たちは大宇宙の一部にしか過ぎないことが分かります。
私たちは、人間中心に考えて、自分を宇宙から独立した存在だと考えがちですが、実際には宇宙の一部でしかありません。

 以上のように肉体は死んでも、宇宙の一部になって永遠に存続していきます。
 一方、私たちの意識や記憶といった情報も、死んで消えてなくなるわけではありません。量子論では、宇宙のすべての情報は消滅せずに、量子真空のゼロ・ポイント・フィールドに記録されているといいます。
 ペンローズの量子脳理論では、意識は脳のマイクロチューブル(微小管)で起きるといいますから、私たちの意識は量子もつれ(エンタングルメントEntanglement)によって、宇宙全体と相互作用しているのです。
 あなたが悲しめば、全宇宙が悲しみます。あなたが喜べば、全宇宙が喜びます。私たちは、宇宙を織り成すタペストリーの一本一本の糸です。宇宙と私たちは、一体なのです。

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