超越的な感覚で時間を伸ばし、思いを実現させる方法 13
右脳の力
私たちの頭部には、左脳と右脳の、それぞれ性格の異なる二つの脳が存在します。
左脳は、目に見えるもののみ、一度に一画面ずつ処理します。直線的につながる言語は、そこに集中していないと意味が掴めません。
右脳は、目で見えないものや、耳で聞こえないものも含めて、あらゆる情報を大量に並列処理します。それも言語を使わずに、一瞬で内容を把握します。また、左脳の処理が意識的に行われるのに対して、右脳の処理は無意識に行われます。
この左脳と右脳をつなぐ働きをしているのが、脳梁(のうりょう)です。脳梁は左右の大脳半球をつなぐ交連繊維の太い束で、この連絡が切られるとさまざまな障害が生じます。
それでは右脳だけで生きたらどうなるのでしょうか? 脳科学者のジル・ボルト・テイラー博士が脳卒中になり、左脳が機能停止して、右脳だけが活動するという状態で、しばらくの間生活しました。その体験談が、彼女の書いた本にでています。
その記録によれば、左脳が停止してしまうと、あらゆる論理的な思考を失い、電話番号さえ記憶できず、電話もかけられない状況になったのです。言語も論理もまったく分からなくなり、話もできない。つまり、左脳が停止してしまうと、人間は、日常の基本的な活動はまったくできなくなってしまいます。
一方、左脳が完全停止したとき、彼女は右脳の安らかな意識に包まれ、すっかり危機感が失われていました。おしゃべり好きな左脳がいなくなり、右脳が優勢になったことで、心安らかな幸福感と宇宙との一体感という、それまで経験したことがなかったことを体験しました。
彼女は、「言語と『個』の意識もなくなり、自分の体がどこから始まりどこで終わっているのか、その境界を識別することができなくなりました。私の自己認識は、大きく変わりました。自分が宇宙と同じくらい大きなエネルギーの『球』だと感じました。完全に右脳の意識へと移行し、自分の本質は、広大で、まるで音のない幸せに満ちた海を泳ぐクジラのように、魂が自由に飛び回っているような感じ。」と述べています。
彼女は、脳が二つの半球に分かれているのには理由があるといいます。左脳がなければ体の外の世界でまったく機能しなくなる一方、右脳は私たちを全人類の意識、さらには宇宙の広大で開放的な意識と結びつけているといいます。
また彼女は、「このような二つの半球を一つの脳のなかで連携して働かせることで、私たちは自然な二面性を経験します。その結果、左脳と右脳の自律的な視点が引き起こす対立に苦しめられるのは、当然なのです。」と述べています。
ジル・ボルト・テイラーの体験した感覚は、スピリチュアルの世界のものだと思います。
スピリチュアルでは、瞑想により、異次元へのつながりなどの超感覚を得ることが、一つの目的になっているのですが、同じことが、左脳を停止し、右脳が主役になることにより、ストレートに体験できたことになったのです。
だからといって、宇宙と一体となるには、左脳を停止してしまえばよいかというと、それでは、日常生活ができなくなるのです。
彼女は、脳出血を起こしてから、それ以前の人生で経験した感情はすべて無くなり、安らかな多幸感以外は何も感じない状態になったのです。このことは素晴らしいことのように聞こえますが、その一方で彼女は、体が回復するまでに8年かかって、その間に悩みや、罪悪感や、恥ずかしい感情と、他の魅力的な感情もすべて取り戻したそうです。そして彼女は、人生さまざまな感情を抱くことで、はるかに多様で面白くなるのも事実であることを発見したのです。負の感情ですら、経験を豊かにし、人生をニュアンス(微妙な意味合い)に富んだ、素晴らしいものにしてくれるということに気づいたのです。
私にとっても、この指摘は大きな気づきになりました。人生において、失敗や悩みなど負の感情は、もう一人の自分(真我)から俯瞰すれば、人生を豊かなものにしてくれているありがたいものと理解できるからです。
最近の人工知能の話題ですが、 AIには、人間の左脳が相手なら、簡単に人間を打ち負かし、人間の左脳を簡単に越えてしまいます。
しかし、人間の右脳には、外部の広大な世界にアクセスしているので、計算ではたどり着けない別次元であるのです。スピリチュアルの経験談では以前から知られていましたが、脳科学者のレポートによっても、そうであることが分かってきたのです。
左脳だけなら負けるが、右脳との絶妙なコンビネーションを組むことにより、人間はAIとは違う別次元の存在になるのです。将棋八冠の藤井聡太のように。
AIの専門家たちも左脳だけで物事を考えないで、もう少しスピリチュアルを自分で経験して、右脳の威力を考えてみる必要があると思います。
最後までお読みくださりありがとうございます。どうぞ参考にしてくだされば幸いです。
2023年12月7日 望月 勇